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折り畳み机(1480×400)

またまた、新作!今度は「折り畳み机」です。天板のサイズは長さ1480mm×幅400mmです。

作ろうと思ったキッカケは、やはり、手作り市などに出品される出店者さんから、キャンプ用の折り畳み机は、軽量&組み立てが簡単・・・・だけど、貧弱で安っぽいって意見から。

天板は、出来るだけ軽くする為に補強したくなかったので、18mm厚の寄木合板(パイン)を使用。脚は耐久性のある、国産杉です。何かと私は国産杉を使いますが、国内有数の良い杉の産地「和歌山」であり、周囲に木材を扱う知り合いが多く、他の木材より入手しやすいのもモチロンですが、価格と加工性と耐久性のバランスが良いから好んで使っています。塗装はログ・ハウスやウッド・デッキにも使われる耐水性に優れた「キシラデコール(ウォール・ナット色)」を使用してます。

木組みして、丁番(ヒンジ)金具だけで作ってますが、筋交いの三角形構成の寸法計算してあるので、折り畳み部分は「コクッ」っとプッシュ金具を使ったような節度感があります。(精度が良くないと、こうはなりません)

立てると、ガタガタと大きく揺らしたぐらいではビクともしませんが、一旦、脚を折り曲げ始めると、脚はスムーズに自重だけで畳めます。(逆に天板を持って浮かせると、勝手に脚が起きて一人で起こせます)この脚が伸びきった時の「コクッ!」っとした節度感は、我ながら良い感じなので、是非!実践して頂きたいです。

畳んだ状態。スッキリしています。実はコレ!某木工書籍のオマージュです。

ただ、書籍中に不備(掲載ミス)があったので、自分で寸法を計算しなおし、私なりのアレンジを加えて耐久性も、カナリ持たせています。また、画像では見難いのですが、天板の側面にもリーマーで飾り彫りしてあります。

ヒンジの数が12箇所と多く、天板も・・・材料費が意外にも高くついたので、予価5000円~6000円くらいになりそうですぅ。

シャビーの好み

近頃は「シャビー」な木工が、ガーデニング業界や女性の間でも人気だそうです。

シャビーとは「寂れた&くたびれた感では無く、良い感じに使い古したオシャレなヨーロピアン調&アメリカン・カントリー調」っと言った定義だそうです。難しい区分けをするツモリはありませんが「ボロい」「汚く汚した」のでは無い、馴染みやすく、温かみがあって手作りっぽくて、それでいてオシャレ・・・・っと言う感じだと思っています。(正確な定義は無いので私の主観です)

っで、私の作品にもシャビーな商品が多いのですが、私のシャビーでもいくつかのタイプがあります。同じシャビー調でも、観た印象、手に取った質感、周囲とのバランスの調和などで、少し変化させています。

どれが良いのか?お客様の「シャビー」に対するイメージの持ち方で、シャビーの塗装の仕方を3種類ほどに分けてます。では、同じ木工商品で比べてみましょう。

~ライト・シャビー~

例えば、コチラは淡いイメージのシャビー塗装。塗料を薄めて、うっすらと木目と刷毛ムラを出してます。出来るだけ、ペンキのボテボテ感を抜いて、アッサリ仕上げてます。

もちろん、シャビーなので、少しエッジ(角)を落としていますが、シャープな感じが生きて、透明感があります。

 

シャープな分、こういう作品よりも、繊細なラインの多い作品に合うと思います。

水性ペンキをシャバシャバに薄めて塗りますが、下地も刷毛ムラもそのまま仕上がりに出ちゃうので、下地をしっかり仕上げないと出来上がりが「塗り足りない」感じになってしまいます。ペーパー研磨も最終に当てますが、エッジを落としすぎないように注意してます。野外放置は不向き。室内向きです。

 

~ポテ塗りシャビー~

通称「ポテっ塗り」の通り、粘度の高いペンキで、わざと刷毛ムラを大きくして、カントリーな雰囲気をUPさせています。下地には、殆ど影響されませんが、ミルク・ペンキ等、粘度の高いペンキは塗り過ぎると、塗装面がひび割れてきます。そのひび割れを逆に利用する手法もあります。

 

 

「ポテッ」っとさせる分、全体的に重たくなるとダルいので、出来る限りエッジを落として、表面もペーパー研磨をしっかりして「刷毛ムラがあるのに、触るとツルツル」っと言う感じに仕上げると良いです。粘度が高いので乾き難いですが、確実にコーティング出来てるので野外放置も全然OK!ですね。

 

 

~ハード・シャビー~

これぞ!シャビーって感じのペンキがコテコテ、刷毛ムラはもちろん、所々にペンキの剥げがあります。一般的に、この塗り方の場合は、予めグレーで下地を塗っておき、上から粘度の高いペンキで塗った後にヤスリで削っていきます。

 

 

 

私の場合は「本物のシャビー木材」も使っているので、本来の質感を無理矢理に塗装で真似るのでは無く「コレはコレ」っという感じで使い分けてます。下地にグレー塗装では無く、バーナーで焼入れをして、その上に粘度の高いペンキを塗って、最終にガンガン!ペーパー研磨を当てています。二重塗装より遥かに早くて、質感も良いですよ。

 

 

っと言う感じで、同じシャビーでも大まかに3種類に塗り分けてます。

繊細なラインを消したくない小物は、ライト・シャビーで。大きな存在感のある商品にはハード・シャビーで佇まいごと演出するって感じです。個人の好みもあると思います。

スッキリ透明感があって、ラインがクッキリ出るのが、好みの方も居れば、ぽてっ!っとしてて「長年使い込んで、何度も塗り重ねてます」感や錆びた金具がアンニュイに思う人も居ます。

どちらかと言うと、洗練されたデザインを目にする機会の多い方は、シャビーな雰囲気が好みのようで、逆に田舎や年配の方にはシャビーの良さよりも「新品らしさ」が好みのようです。

私はどちらも良いと思います。シャビーは可愛いと思うし、そのニュアンスを大切にしたい。だけど、刷毛ムラなど全く無い、ビシーっ!っと真っ直ぐな「真新しい」のが良いと言うのも判ります。

センスと言うのは、多数決では無く、その人それぞれの個性やイメージだと思うので、私はその人が望むニュアンスを汲んで商品として具体化したいなぁ・・って思います。

木の種類の話。

「CrafTraf(クラフトらふ)」の木工製品は、和歌山の国産杉をメインに使っています。

何故、国産杉を好んで使っているか?

和歌山には、良質なヒノキや杉が多く、昔から吉野と並んで林業が盛んで品質の良い木材が入手しやすいです。スギやヒノキの針葉樹は、日本に広く分布しますが、本州より以北、寒い方が成長が遅くなり、木目が細かく良質になります。同じ和歌山でも北向き山と南向き山では品質が違います。ヒノキは良いのですが・・やはり杉と比較すると、カナリ高価になるし、杉よりは固いので・・・・・私のショボイ技術と工具では加工面で劣ります。

「高価で末代まで長持ちする数万円する高級な木工」をコツコツ作るなら、そりゃあ誰だって、杉よりヒノキの方が良いです。捻りや反りも杉と違って、簡単に言うと穏やかです。(一般人にわかり易く言うと・・・って意味です)

現に、和歌山の日本家屋の大半はヒノキで、私が近所の大工さんのお手伝いに行っても、殆ど使用されている木材はヒノキがメインです。杉よりヒノキが木質的に良いのを判ってて、「加工性」「価格」「耐久性」「入手し易さ」のバランスがベストな国産杉を使ってます。

一方、広葉樹や赤松、米松などの輸入材では加工性が良いものは、やはり木質密度が緩い。つまり安い輸入木材は、国内木材と比較にならない程、耐久性と言うか野外放置した時の耐候性が落ちる。ガーデニング木工には、ある程度の耐候性が必要ですから致命傷ですもの。

逆に、固くて高品質なアンティーク家具に使われるような良質オークやチークなどの高級輸入木になると、今度は一気に高価になり、硬くて加工性も劣ります。輸入経路に依存するので一般では買えないし高価です。

荒れていく針葉樹林。ダメな国策が原因?

それと・・・・近年、輸入材に推されて、また、国産杉の建築需要が減少が拍車をかけ、国産杉が大量に余っています。和歌山もご他聞に漏れず・・・・。

ただ、国の政策や目先の緑化ブームで一気に杉&ヒノキの植樹が増えた為に、根の浅い針葉樹林では地すべりが起こり易かったり、需要とのバランスを考えないで増やし過ぎた為に、成長して出荷出来るまでの約25年間に掛かる「間引き」「枝打ち」などの膨大な維持管理費が見合わず、放置されて荒れ放題に陥る針葉樹林も大変、多いのです。スギが花粉症の原因になる程、植えまくった挙句、荒れ放題に放置してるのは、国の林業政策が甘いからです。すべて国策が悪い!っと言いたくないですが、やるだけやって後は放置ってのは・・・・山も生き物ですから、手入れをしないと国有林もドンドン荒れていきますよ。

実家も杉の山を持っていますが、間引き(細い木から順次切り出して、選抜された良質を育てる)して切り出した木材の収入で、年々の維持費を賄っていたものが、ココ数年で値段が下落し、林業離れも進み、逆に伐採費用が高騰しているので、間引きして、それを売っても切り出し&運び出した費用でチャラになっちゃうくらい。

針葉樹林を所持してる=お金持ちは過去の話で、今では原木を売っても大した収入にならない&維持管理費や税金だけが毎年出て行く・・・しかも、その収益は成長し25年以上経過した後・・・

最近では、より良い原木を育てる為に、25年よりも、もっと長く!50年とか100年育てよう!っと言う動きになってる。(確かに立派で高価な原木にはなりますが・・・)つまり、そうなれば成長する途中の世代は、維持管理の費用だけ掛かって・・・収益自体は、ひ孫ほど先の後世に残すことになる。

山を沢山持ってる田舎の心優しいお爺ちゃんは、そう願って託しても、次にバトンを渡された中間世代(息子や孫)が、そこまで寛容だとは限らない。っと言うか、経済成長率が下がった今の日本で、木の事も山の事も知らないサラリーマンの息子だったら、譲り受けても「偉いもんを相続させられた・・・・」と大半が思うだろう。

儲かるどころか、毎年、維持管理が掛かってくるだけ・・・・お爺ちゃんの心意気は伝わらず、志半ばで放置されるか?単に土地価格として売買されてしまう・・・。これが日本の林業をダメにしてる実態なのかも?

実は、日本の杉やヒノキは、成長がゆっくりで木目が細かく、且つ硬い。東北とか日照時間の少なく、寒さ厳しい山側の年輪は細かくて、密度も高く、良質な原木が多いです。和歌山も寒さが厳しく、山の傾斜がキツく、針葉樹林に適しているので、地場産業として栄えました。

捻りや反りが少なく精度が良い、それでいて加工性も良い。世界一の品質の木材なのに・・・。コレに変わる木材や新素材も未来になっても出て来ないよ?日本の風土と違う外国に杉やヒノキを大量に植えても、同じようには育たないよ?日本ならでは!の誇れる木材なのに。それが徐々に放置されて失われる・・・。国益と言うか、世界が羨む最高品質で高バランス!良質な国内木材に「日本人が一番、理解出来ていない」って・・・情けなくなりますよね。

現在の建売住宅は、殆どがツー・バイ・フォー材。私も建築業をしているので、使いやすいのは判りますが、耐久性の無い湿度に弱い木材をワザワザ輸入して、国内の宝を使わず腐らせるってのは・・・知らない人が多過ぎですね。

昔は、歩いて行けるウチの近所でも、5箇所くらいあった製材所は・・・殆ど潰れちゃいました。

大工さんが急場しのぎで「安くて何でも良いから、急いで持ってきて!」っと木材屋に言えば、一昔前なら、安価な輸入材を慌てて持って来る場面があったのに、今ではボトボトに濡れたGreen Wood(グリーン材=切り出した乾燥させていない木材)国産スギを持ってきます。(苦笑)もう、輸入材よりも安く、値打ちが無いとは・・・。

そう言う「国内産の杉よ!頑張れー!」って意味でも、和歌山の杉を好んで使ってます。